なぜ予防が大事なのか…①
- 自費訪問リハTREE
- 2021年1月26日
- 読了時間: 5分
更新日:2021年1月31日
昨年『自費訪問リハTREE』を開設しました。
開設後は生活習慣病予防や病気発症後の再発予防に力を入れてきました。私が担当している利用者様やそのご家族は予防の重要性を感じていらっしゃるかと思いますが、このブログに馴染みの浅い方は、なぜ大事なのだろう?と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、私が予防の重要性を感じた経緯を数回に分けてご紹介したいと思います。話が飛び飛びになることが予測されますので、温かく見守って頂ければと思います。笑
離島僻地医療に携わりたいと理学療法士の資格を取得し、長年沖縄で過ごしてきた私でしたが理学療法士の大先輩にきっかけを頂き、東日本大震災から3年経過した宮城県気仙沼市へ移住しました。沖縄から離れることに半年ほど時間はかかりましたが、この経験が今後必ず役に立つと感じたため、後悔はありませんでした。
所属先は、『一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 気仙沼訪問リハビリステーション』。平成23年3月11日の東日本大震災後に施行された東日本大震災復興特別区域法に基づいて開設した事業所。『(一財)訪問リハビリテーション振興財団』は、平成24年10月に震災復興事業等(単独型訪問リハビリステーション:介護保険のみ適応)の展開を一つの目的として(公社)日本理学療法士協会、(一社)日本作業療法士協会、(一社)日本言語聴覚士協会により設立されました。
宮城県北東部に位置する気仙沼市は、元々医療資源の少ない地域(平成20年3月時点の人口10万人当たりの医師数:全国平均224.5人、気仙沼医療圏115.3人)でした。そこに東日本大震災が起こり、生産年齢人口の減少(平成22年3月末の人口74,926人→平成28年6月末66,178人)や高齢化率の上昇(平成22年3月末30.1%→平成28年6月末35.5%(大島43%))が急速に進んだ地域です。
震災前の気仙沼市には、訪問リハビリテーション事業所2か所、訪問看護事業所1か所と極めて少なく、通所・施設系のサービスも事業が縮小化していました。気仙沼訪問リハビリステーション開設前は、訪問リハビリテーションに関わるスタッフが人口約7万人に対して4名。しかも2人は病院との掛け持ちでした。予防が必要なのは明らかです!
さて、気仙沼入りする前の2週間は、福島県南相馬市の浜通り訪問リハビリステーション(東京電力福島第一原発より約20㎞圏内)で研修を受けました。その間、訪問リハの仲間と共に地域活動にも積極的に参加させて頂きました。そこで目にしたものは、立場は違いますがこれからの南相馬市について真剣に意見を交わす仲間の姿。医者だろうが、何だろうが関係ありません。お医者さんに失礼でしたかね。スミマセン…。ただ、皆が台頭にものが言える関係だということを表現したかっただけなのです。短時間ではありましたが、これまで経験したことのない空気感。体に電気が走るというのは、こういうことなのかと...。
南相馬市を去る前に、避難解除準備区域であった(滞在時間に制限のある)小高地区で一人車を走らせました。大きな町に人一人いない静けさ。外国映画のワンシーンのようでした。津波による被害の痕跡残る家やひっくり返った車を見て、言葉も出ませんでした。
一軒一軒見てまわりましたが、窓がなくカーテンがなびいているお宅や大きなソファー・テーブルが転がったままのお宅など...。ここでどんな家族が暮らしていたのだろう、あの時ここで何が起こっていたのだろうと深く考えさせられました。表現は難しいのですが、体が締め付けられるとでも言うのでしょうか、とにかく頭が割れそうな、とても苦しい時間でした。たった1時間ではありましたが、その時の映像は今でも鮮明に覚えています。帰りにサルの群れと遭遇しましたが、その背中がすごく寂しかったことも目に焼き付いています。
浜通り訪問リハビリステーションからの訪問中、利用者様から伺った話をいくつか挙げますと…東京電力福島第一原発から約何㎞圏内の方には医療保険料が免除になるなどの補償はあるが、道隔ててこっちからは補償されないという厳しい現実でした。何かをするときには、どこかで線引きが必要ということは理解できるのですが、非常に難しい問題であるとその時感じました。
老々介護のご夫婦。
旦那様が障害を抱えており、1日の大半をベッドで過ごす生活。外出は車いす。医療費が無料になったことで、これまで受診されていなかった方の受診が増え、朝早くから受付に並ばなくては薬がもらえない状態。朝早くにタクシーを予約し、やっとの思いで病院へ着いても既に受付終了ということが多く、受診できるまでにお金も労力もかなり使われたということでした。誰が悪いとか攻めているのではなく、ご自分たちで努力されても必要な方へ必要な時期に必要な医療が届けられない環境があるということを知ってほしいのです。お金では埋まらない溝。お金で深まる溝があるということ。ただでさえ厳しい環境下で生活をしているのに、補償の差で住民同士の要らないいざこざ(ストレス)を生む結末...。
沖縄本島に住んでいるときに感じた基地問題。そとものが簡単に口にすることのできないナーバスな問題。東日本大震災後の福島県でも同じようなことが起きているのだと感じた瞬間でした。これはあくまでも私見です。ご気分の悪い思いをされた方がいましたら、大変申し訳ありません。
また別のご夫婦のお宅へ訪問すると、家の隅に追いやられた線量計。これは?と質問する私に、こんなもんつけて生活なんかできるもんか!と一言。ごもっとも。
皆覚悟を決めてここで生活されているのだと感じました。
沖縄県の石垣島で担当していた患者様が自宅のある離島に戻られ、診療所がなくてもたくましく生きていくあの清さを思い出した瞬間でした。どんな環境であっても生まれ育った地域で最期まで暮らしたいという思いは皆同じということ...。
東日本大震災後、一瞬で超高齢化社会ができあがった地域には、『これからの日本の縮図』があるといわれた先輩の一言。一見は百聞に如かずでした。
日頃から、予防という概念を持っていれば、何か起こったとしても各々がおかれた環境下で考え、できることがあるということ。やっぱり表現がうまくありませんね...。しかし、人間は生きようとする生き物。予防している方は強いということ。今後も予防の重要性をお伝えしていきますので、ご興味のある方は引き続きブログをご覧ください。
つづく
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